隠さず隠せ
2019.05.07 投稿
西野亮廣 個展
『チックタック 〜光る絵本展と光る満願寺展〜』
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華やかなで厳か、幻想的なライトアップ。
照明や音楽が時間や天候によってミリ単位でデザインされた光る絵本展史上最高クラスのイベント。
今回は「それらが活きるような空間デザイン」についてです。
このイベントのメインは照明ライトアップで、
入口の山門からゆるく下る長い参道をぬけ、
本堂、そしてチックタック展への人の流れのデザインは
いたってシンプルな構成。
わーっ!となるポイントと、うー↓というストレスポイントを
既存の環境に合わせて構成しています。
それらが活きるような、というのはつまりせっかくの演出が視界に入る様々なノイズによって阻害されないようにすること。
視界に入るノイズとはつまり、使っていない道具や無駄な張り紙、ゴミ、などはもちろんのこと展示に必要な機材、配線や配管などなど。
たとえば、
階段 一段一段の水平ラインを照明で美しく演出しているのですが、
照明器具なので当然配線コードがあるわけです。
その配線コードや機材が見えてしまうと、
無意識であっても本来見せたい光の筋だけに視線が集まらず、
美しい印象が半減してしまうんですね。
そのためには配線を隠さないといけないのですが、
どのように隠すかというのがデザインです。
隠し方が「隠してる」と感じさせない さりげない隠し方をしたくて、
ここでは半割りにした竹で配線コードを隠しています。
本堂の柱をライトアップするのに照明器具の固定をする場所は無垢の板。
山門への逆光を表現するための照明器具の柱は、山門と同色に塗装。
いずれも当初は黒く塗装する予定でしたが、
古びた建物の柱に黒い板があるよりも、
色は違えど無垢の板が取り付いているほうが自然だし、
山門の背後に黒くてでかい柱があるほうが存在感が出てしまうので
山門の一部のように見せてしまう方法をとりました。
どうしても見えてしまう部分を”隠す”には”隠蔽”ではなく、
メインの対象物にしっかりと意識が向くようにデザインすることが大切で、
”同化”させて存在を消すという手法があるということ。
見せたい対象物だけをデザインするのではなく、
見せたい対象物を活かすためのデザインをどれだけできたかで、
その空間のクオリティー、体験者の満足度を数段あげることができます。
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