REPORT

空間を育てるということ

お疲れ様です。チーフデザイナーの千葉です。

建築や空間設計って、よく「引き渡し」という言葉で区切られます。
図面を描いて、工事をして、完成したらオーナーさんにお渡しして、設計者の仕事はそこでおしまい。
でも、そこからが始まりなんだなと、今回あらためて感じました。

長崎・思案橋にあるスナックCandy。
そのお店のオーナーが、ふと仰っていた一言。
「この空間があったから、がんばれたんです」
オーナー自身、飲食店もスナックも未経験。
しかも居抜き物件で、老舗が立ち並ぶこのエリアに飛び込むのは、かなり勇気のいることだったと思います。
そんな中で、只石がつくったスナックCandyの空間が、オーナーにとって背中を押してくれる存在になったそう。
今では「この空間に行ってみたい!」と思ってお越しいただくお客様もたくさんいるそうですが、
そこにいたるまでには、引き渡し後も空間づくりを続けてきた時間がありました。

えんとつ町にあるスナックというちょっとファンタジーな世界観の中に、
リアルなスナックとしての機能性や、長崎という土地の歴史や空気感をしっかり融け込ませて、
ボトルやグラス、小さな豆皿、貼り紙まで――
お店で使われるものひとつひとつを丁寧に選び、空間全体を丁寧に整えていったんですね。
「お店で使う食器くらい、オーナーさんの自由でしょ?」
と思うかもしれません。
私も、最初はそう思っていました。
でも、「なんでこの空間にはこのデザインがいいのか」
その理由をちゃんと言葉にして、丁寧に伝えていく姿勢。
その説明を聞いて、納得して、一緒に選んでいくオーナーの姿勢。
一体どこまでが設計なんだ!と思ってしまいますが、
その過程を見ていて「空間を一緒につくっているな」と、強く感じました。

空間も、使われてこそ。
使う人がいて、育ててくれる人がいて、ようやく活きてくる。
設計した空間の大事なことや、背景にあるデザインの理由を
ちゃんと伝える作業も必要だし、
オーナーと一緒に空間を育てていく感覚を持つことも、やっぱり大切なのだと。
まだまだ学ぶことばかりですが、だからこそ、もっと空間づくりがおもしろくなってきました。
次はどんな空間を一緒に育てられるか、楽しみです。

お疲れ様です!