見上げる家の階段
アシスタントの笹本です。
先日、先生が設計した『見上げる家』のガイドツアーに同行しました。写真や模型では見ていましたが、自分自身はじめて見学に行くのですごく楽しみにしていました。
15人くらいの参加者にお集まりいただき、建築的な空間構成の話もさることながら、細部へのこだわりを参加者のみなさんと一緒に聞くことができました。
その中でも印象的だった「階段」にフォーカスしてレポートします。
「階段」と調べると、段になった通路。特に、建物の一つの階からほかの階に通ずる段。と定義されます。
しかし、わずか28坪の見上げる家には階段と呼ばれる段が計7つもあるのです。いわゆる一般的な3階建て住宅には、意図しないかぎり7つも階段を作りません。
ということは意図して段をつくっているということが予想されるのですが、見上げる家では階を上下に移動するための縦動線だけでなく、階を横移動するときの空間の切り替え(ここから別の空間だよ~というところ)に効果的にその「階段」を作ることによってメインの空間を際立たせ、建物全体として飽きさせない空間構成を実現していることがわかりました。
またこれによって部屋として区切られていないのに部屋がいくつもあるように錯覚し結果的に「広い空間」と思わせるのだと思います。
このことから階段は、見上げる家において空間演出をする重要な要素といえるでしょう。
いままで階段を上下に移動するためだけのものとしか見ていなかった僕にとってはまさに目から鱗が落ちるような階段の使い方でした。
また、この工夫に充ちた空間構成に加え、すべての階段の素材を変え、さらに細部までこだわったエイジング技術によって世界観が演出されています。
玄関と外階段は家だけど家っぽくない感じにしたいというコンセプトから、玄関は1階ではなく、1階と2階の中間に設けることで、そして外階段は地面と異素材にすることで、家に入るというより、乗り物に乗るという感覚に近い効果を生み出しています。
内部階段には新築なのに何年も使われてきたように見せるエイジング加工が施されています。
これにおいても普段触られにくく汚れが溜まるところとよく触るから汚れが付着しにくいところを想像しながら加工していくという途方にくれるような手間がかけられており、このツアーで一番驚嘆しました。
このように空間という大枠の中にいても細部までこだわるからこそその魅力がより引き出されているのだと感じます。
以上、見上げる家の階段についてのレポートでした!