REPORT
山の匂いと都市の足音
おはようございます!アシスタントの白石です。
──────
千代田区三番町。
かつて江戸城の警備のために「大番組」と呼ばれた旗本たちの屋敷が集められたのがこの街に、「艸の枕」という名前の建築設計事務所がある。
五階建てビルの最上階。エレベーターを降りると、少しひんやりとした空気と、明るすぎない光に迎えられる。
事務所の窓から見えるのは、大学のキャンパス。桜の花びらがひらひらと舞い、向かいの建物の輪郭をやわらかく縁取っている。
木の匂いが立ちのぼるわけでも、山の空気が流れてくるわけでもない。
けれどそこには、どこか時間の流れ方が違うような、不思議な静けさがある。
アンティークの家具やランプ、小物たちが、まるで舞台装置のように置かれていて、それぞれが何かの記憶を宿しているようにも見える。
代表を務めるのは、只石快歩という建築家。
山あいの町でうまれ、美術と建築のあいだを行き来しながら学び、庭園作家のもとで空間と思考の関係を培ってきた人だ。
住宅も、フェスも、スナックも――手がけるプロジェクトは一見バラバラに見える。
でもそこには共通して、「物語を設計する」という思想が、芯のように通っている。
艸の枕がつくる空間には、よく見ると“問い”が潜んでいる。
「楽しい」は、空間として設計できるのか?
「物語」は、建築の構造になりうるのか?
「フィクション」は、都市を変える力を持っているのか?
それらの問いに、明確な答えが用意されているわけではない。けれど、空間のなかに、そのヒントがさりげなく散りばめられている。
新しい季節がはじまるこの風にのせて、そんな“艸の枕の設計思想”に、少しずつ触れていこうと思ってます。
ひとつひとつの風景に潜んだ“見えない柱”を、丁寧に読み解いていくように。
今日もよろしくお願いします!